佐藤 初 Hajime SATO, PhD
幼少期の頃から魚が好きでした。特にサンゴ礁の生き物たちに魅了され、現在では沖縄の海に潜って観察して彼らの知られざる生態を研究しています。お気に入りの図鑑は、山と渓谷社『日本の海水魚』です。
略歴
- 広島大学生物生産学部 卒業(2020年)
- 広島大学大学院 統合生命科学研究科 農学博士 取得(2025年)
- 京都大学大学院理学研究科 動物行動学研究室 特定研究員(学振PD)(2025~2026年)
- 沖縄科学技術大学院大学 海洋生態進化発生生物学ユニット(学振PD)(2026年~)
主な受賞歴
- 笹川科学研究奨励賞 日本科学協会(2021年)
- 広島大学研究科長表彰 大学院統合生命科学研究科(2021年)
- Chorafas Prize 2025 Dimitris N. Chorafas Foundation (スイス)(2025年)
- その他 学会発表賞など
連絡先
メールアドレス hsato98[at]outlook.jp (atを@に変換)
あるいは、hajime.sato[at]oist.jp


■ 研究内容|サンゴ礁魚類の行動生態学
豊かな生物を育む沖縄のサンゴ礁を舞台に、魚類の行動、生態、進化に関する研究を行っています。私の研究の特色は、実際に海に潜り、自らの目で観察するフィールドワークです。生物多様性の高いサンゴ礁には、まだ解明されていない魚類生態の謎が数多く残されています。誰もが「面白い」と感じるような研究を目指すとともに、健全な海洋生態系を後世に残すため私の研究がどのように貢献できるのかを考えていきます。
★ 魚類の共同捕食における協力メカニズム(個体間相互作用の研究)
私が最も面白いと思っている魚類の行動の一つに「ハタとウツボの共同狩猟」があります。両者はそれぞれ異なる狩りの戦略を進化させた魚食性の捕食者ですが、双方のテクニックを組み合わせることで獲物の捕獲成功率を飛躍的に向上させているのです。このように、生物は他種(他個体)と協力して狩りをする(共同捕食)ことがあります。
私はサンゴ礁に生息するニセクロスジギンポという体長10 cmほどの小さな魚が、 群れで狩りを行うことを発見しました(Sato et al. 2022)。「狩り」と言っても、狙うのは巣に産みつけられた魚の卵です。しかし、卵は親魚によって防衛されているので、簡単には食べることができません。そこで、彼らは保護卵を略奪するため群れで協力するのです(Sato et al. 2024)。
現在私は、彼らがなぜ集団で生活し狩りを行うようになったのか?という進化史と、どのように協力を達成するのか?という社会関係を調べています。最終的には、魚たちが見せる知性と社会性を形作る仕組みを解き明かす糸口にしたいと考えています。

© 2026 Hajime Sato.

© 2026 Hajime Sato.
★ イソギンポ科魚類をモデルとした擬態の機能と進化
擬態 mimicryとは、ある生物が別の生物を模倣することで採餌、繁殖、生存上の利益を得る現象です。この現象は、生物が自然選択によって進化してきたことを示す魅力的な例です。擬態は無毒な蝶に似た毒蝶の発見から始まった分野ですが、魚類からも様々な機能を持つ擬態が報告され、大多数はサンゴ礁などの熱帯水域に集中しています。
しかし、擬態機能が科学的に検証された例というのは、実は多くはありません。特に魚類では、「似ている」という研究者の主観に基づいているにすぎない場合が多いです。私は、魚類の中でも、擬態種数が最も多いとされるイソギンポ科を材料に、擬態の適応機能を調べる行動生態学(Sato et al. 2023; Sato & Sakai, 2025)、擬態が進化した背景を遺伝子から調べるゲノミクス、色素組織の生理学的調査の3つを組み合わせた分野横断研究を進めています。イソギンポ科をモデルに脊椎動物における擬態が多様かつ急速に進化したメカニズムを明らかにしたいと考えています。

Sato &Sakai 2025を改変 © 2026 Hajime Sato
★ サンゴ食性魚類の生態系における機能
サンゴ礁には他の生態系では見られない特異的な機能を有する魚たちがいます。それがサンゴ食性魚類です。サンゴ食性 Coralivoreとは、サンゴのポリプや骨格を食べる食性のことを指し、サンゴに共生する藻類の栄養を高次の栄養段階に供給する役割を担う反面、サンゴへの深刻な食害をもたらす可能性が指摘されています。
私たちはサンゴ食性が報告されているモヨウフグ属魚類(特にコクテンフグ)を対象に、どのようなサンゴをどれくらい捕食しているか(炭酸カルシウムの消費速度)を定量化し、サンゴの石灰化速度と比較することで、フグがサンゴ礁に与える影響の評価を行っています。加えて、近年、頻繁に発生するようになったサンゴの大規模な白化現象に対して、サンゴ食性コクテンフグがどのように応答するか?を調べています(Kubota et al. preprint)。

© 2026 Hajime Sato.
★ 漂流物が創出する生態系の解明(稚魚の生存戦略と漂流物生物学)
地球表面の約7割は海洋が占めると言われていますが、その大部分は外洋です。外洋の表層には、流木や植物の葉、流れ藻、軽石、そして人の活動によって排出された海洋ごみ等の漂流物が漂っています(Sato et al. 2026)。
漂流物の周囲には、沢山の稚魚類を含む生物群集が寄り添って生活しています。これは、漂流物が水上と水中の捕食者から身を隠す唯一のシェルターとなるほか栄養の乏しい外洋環境で効率よく餌生物を探索する採餌の場所にもなっているからです。興味深いことに、漂流物にそっくりな姿へと進化を遂げた魚もいます(Sato et al. 2023)。私は漂流物の下にも生態系が形成されるというアイディアのもと生物多様性の創出効果を検証したいと考えています(漂流物生物学)。

オヤビッチャとロクセンスズメダイ
© 2026 Hajime Sato.
■研究成果|査読付き学術論文
全ての成果物等は、リサーチマップにて随時更新しています|Research Mapはこちら
全て Corresponding author*
- Hajime Sato*, Yoichi Sakai, and Tetsuo Kuwamura. Effects of group behavior in the predatory raid on damselfish nest by the false cleanerfish, Aspidontus taeniatus. Ethology 128: 77–84 (2022). 🔗Open Access
- Hajime Sato*, Yoichi Sakai, and Tetsuo Kuwamura. Cleaner fish coloration does not always reduce predation risk: testing the effect of protective mimicry in the false cleanerfish, Aspidontus taeniatus. Biological Journal of the Linnean Society 143: blad163 (2023). 🔗Free Access
- Hajime Sato*, Yoichi Sakai, and Tetsuo Kuwamura. Temporary division of roles in group hunting for fish eggs by a coral reef fish. Journal of Ethology 42: 137–143 (2024). 🔗Open Access
- Hajime Sato* and Yoichi Sakai. Predatory foraging tactics correspond with aggressive mimetic fidelity in carnivorous blenniid fishes on coral reefs. Journal of Zoology 327: 19–27 (2025). 🔗Open Access
- Hajime Sato*, Yoichi Sakai, and Tetsuo Kuwamura. Swimming crab in a bottle: A two-month drift on the ocean surface while entrapped. Ecosphere 17: e70609 (2026). 🔗Open Access
共著論文
- Manuel Eduardo L. de la Paz*, Hajime Sato, Takumi Oyama, Angelo Macario, Yoichi Sakai. Mating, Sociosexual, and Nursing Behavior of Wild East Asian Finless Porpoises in the Seto Inland Sea, Japan. Marine Mammal Science, 42, e70116 (2026). 🔗Open Access

